養育費を請求する方法には話し合いや調停があります
養育費を請求する方法は、以下のとおりです。
話し合い
話し合いをした上で、双方納得できる金額で合意する方法があります。
例えば父親に認知をしてもらった場合、
- 支払うべき養育費の金額
- 支払日
- 支払期間(成人になるまで、大学卒業まで等)
- 支払方法(子の名義の口座に振込む等)
など合意する必要があります。
その合意は書面にすべきです。確かに書面作成は、手間はかかりますし、人に任せれば費用が掛かるかもしれませんが、内容を明確にすることが大事です。
また、できれば公証役場で公正証書という書面を作成する方法が望ましいです。その大きなメリットは、公正証書にしておくと、養育費が不払いになっても、裁判所を通じて強制執行(差押え)ができることです。
かかる公正証書の作成は、内容の確認、公証役場とのやり取り等の御負担を考えますと、専門家である弁護士に依頼するのが良いと思われます。
調停、審判
仮に話し合いで決めることが難しい場合は、調停手続を利用する方法があります。
調停とは、家庭裁判所で調停委員(及び裁判官)の立ち合いのもと、申立人(子を養育している親)及び相手方(子を養育していない親、義務者)が、合意(今回の場合は、養育費の合意)を目指して、双方が話し合いを行う手続です。
養育費分担の調停手続においては通常、申立人及び相手方が、双方の収入や特別事情(子について特別にかかる費用の存在、義務者の実際の経済的状況等)を明らかにすること、双方がそれぞれ必要と考える資料(収入については源泉徴収票等、特別事情については子の特別費用の内容を示す書類、義務者の経済的状況を示す書類)の提出をすることが行われます。
調停委員は、双方それぞれに対して、特定の主張や書類提出を促したり、解決に向けてのアドバイスをしたり、解決案(養育費金額等)を提示したりして、双方の合意形成を助けてくれます。
かかる手続を経て、双方の合意(調停合意)ができれば、かかる合意は調停調書となります。一方、残念ながら調停での話合いがまとまらない場合、家庭裁判所(の裁判官)が、双方から改めて事情を聴く等して、審判により養育費を決めます。
家庭裁判所の調停調書や審判調書は、執行力のある債務名義と同一の効力があるので、養育費の不払いがあった場合は、強制執行(差押)も可能となります。
なお履行確保の手段として、家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすることができ、申し出を受けた家庭裁判所は義務者に対して養育費支払履行の説得、勧告をするという手続もあります。しかし義務者が説得、勧告に応じない場合は、強制ができません。
かかる申出には、申出の費用自体は掛からないとのことですので、義務者の状況によっては、差押の前に同申出の利用を検討すべきと思料します。
養育費が支払われなくなった場合
一旦合意した養育費の未払が発生した場合、例えば当該月の養育費支払期限から5年が経過すると、義務者は消滅時効期間(5年間)の経過を理由に、その当該月の養育費の請求を拒めることになります。
かかる養育費の消滅時効期間が伸長されるのは、さきの調停調書や審判調書等で支払の定めがなされていた場合です。この場合は消滅時効期間が、5年間ではなく10年間に伸長されます。
その他、消滅時効期間経過前に、義務者に対して養育費の請求を行っていれば、その「請求日」から6ヶ月間、消滅時効期間を「延長」することができます(いわゆる裁判外の催告・民法第153条)。その後同期間内(6か月内)に、消滅時効中断事由に該当する「裁判上の請求」等(養育費の場合であれば調停申立)を行えば消滅時効は中断します。
しかし、その期間経過日までに「裁判上の請求」等(調停申立)を行わなかった場合、時効中断の効力を生じないことになりますので、「請求日」後の措置を怠ってはいけません。
また、その「請求日」を客観的に明確にするため、養育費の請求は、その請求書面が義務者に届いたことが客観的に明確になる「内容証明郵便」の方法によるのが適切です。