婚約破棄を理由にどのような時に慰謝料を請求できる?
どのような状態だと、「婚姻予約」が成立したと認められる?
婚姻予約とは、将来において適法な婚姻をすることを目的とする契約(大審院裁判例大正4年1月26日)といわれています。
通常、結納の授受、婚約指輪交換、結婚式等の日取り打ち合わせないし決定といった、婚姻予約をしたという外形的事実が存在する場合、成立可能性は高いと思われます。
問題は、かかる結納等、婚姻予約したという外形的事実が存在しない場合、主に、以下のような事実の存否が問題となります。
- 婚姻予約の事実を対外的に表明していた事実(両親や知人等に知らしめる等)。
- 少なくとも婚姻を前提とした同居を前提とした行為(新居の購入、賃貸等)に着手していた事実(当然ですが、婚姻を前提とした同居を開始した事実も含まれます。)。
- 継続的な性関係が存在する事実。
また裁判例からは、上記各事実を含めた当事者間の諸事情から、婚姻予約による当事者の状態が、法的に保護に値する状態に至っていたかを総合的に判断していることがわかります。
婚姻予約の成立を裁判所に認めてもらうためには、婚姻に向けた諸々の行為を客観的に明らかにできるよう、準備(証拠の収集)をしておくべきです。
「婚姻予約」を破棄するとどうなる?
仮に、双方で婚姻予約が成立するも、一方が婚姻予約を破棄した場合、他方が、破棄を理由とした損害賠償請求(慰謝料)が可能となります。
ただし、破棄したことについて「正当な理由」がある場合(例:請求者が他の異性と性的関係を持っていた場合)、損害賠償請求できない場合があります。
なお婚姻予約破棄の場合でも、相手方に婚姻予約の実現を強制する(強制的に婚姻届を提出させる)ことはできません。
婚約破棄の「正当な理由」とは?
「正当な理由」の存否についての判断基準を示す裁判例は集積されているのですが、他所でも解説されているとおり、当事者間の各事実を総合的に判断して、婚姻を破棄したことが正当と認められるか、という方法で「正当の理由」の存否を判断しているようです。
正当な理由があると認められる可能性が高い場合は、
- 一方が他の異性と性的関係を持っていた場合
- 一方から虐待を受けていた場合
- 一方の経済的状況の急激な変化があった場合
等が挙げられますが、他方、
- 単なる性格の不一致の場合
- 相手方との将来に不安を覚えた場合
等は、認められない可能性が高いです。
慰謝料を請求された相手方は、「正当な理由」を認めてもらうため、上記性的関係、虐待、経済的状況の急激な変化等の主張立証をしてくる可能性があります。
かかる主張立証に対抗するため、入念な事前調査や、証拠収集が必要となります。